雪がちらちらと舞っている寒い夜、わたしは横丁のカウンタのなかで餃子を包んでいた。今宵は酔っ払いの乱闘があったりしてなかなかに起伏に富んだ五時間半だったのだが、なにより路地でNHK朝の連続テレビ小説の撮影が行われていて富司純子の姿を見たのがうれしかった。お竜さん、すてき! お客さんとのトークにもようやく慣れてきたものの梅酒二杯ですっかり赤ら顔。酒に強そうな顔つきのくせに下戸。両手広げて「ウェルカム!」と言いながらガードは高い。餃子を包む手つきで客を魅了している場合じゃない。ああだれかに心をゆるせるわたしになりたい。安普請の冷えた六畳間であたたかい番茶と干し芋を食べながら、北の方角に思いを馳せる。美人の猫と暮す女の子に音楽を贈るならいったいなにがいいだろう。