ミスハタリ飛騨路を行く 4 手垢の生活と白川郷

夜半の雨はすでにあがり、幸運にも傘いらずの朝。飛騨古川から高山へ移動し、駅前のバスセンターから観光気分で出発進行。新しい高速道路を走り、小一時間ほどで白川郷へ到着。紅葉にはやや早いが「どぶろく祭り」直前の観光シーズン、駐車場には東名海老名サービスエリアかというくらい数多の大型バス。世界遺産は観光地なのだなあ。まずは展望台へと向かいます。

可憐な姿の秋明菊。咲きどきは札幌も飛騨も同じようです。

白川郷の合掌造り集落、数十年に一度行なわれるという屋根の葺き替え作業のドキュメント番組をずいぶん前に観て驚いた。平成十三年に行なわれたという長瀬家住宅の屋根の葺き替えだったように思う。村中の人が総出の人海戦術で、それぞれが個々の仕事を担い、システマチックに葺き替えていく壮大なプロジェクトの様子にワクワクした。実際にその茅葺き屋根を目前にすると、想像以上に大きくてやっぱり驚いた(もちろん長瀬家や和田家のように大きなもの以外にも、村には寺の三門のように小さな屋根もある)。



秋桜をはじめ、農道沿いに咲く秋の花がきれい。

しかし村にはたくさんの観光客。ほとんどの家がなにかしらの客商売をしている。みやげ物屋も喫茶店も食事どころも、家の前に建てられた飛騨牛串焼きの小屋も、五平餅の屋台も、どこもかしこも繁盛している。昔からの生活を営んできた地が、ずっと伝えられてきた「当たりまえ」を継承したがために、観光テーマパークとなっている。観光客がへんな心持ちで悶々とするのは場違いだと自覚しつつも、不可思議さは抜けない。

時代と空間は、継承されるかぎりは、過去には生きられないものなのだ。

【ミスハタリ飛騨路を行く 2008/10/09-12】
1 岐阜「ダイワロイネットホテル」 2 秋晴れの高山「八幡祭」 3 飛騨古川「八ッ三館」 4 手垢の生活と白川郷 5 高山「スパ ホテル アルピナ」 6 安房峠越えて松本へ