北東北&北海道 冬のより道 3 三陸鉄道、潮風と晴天

13:03宮古駅着の山田線を下車、ホームの先を進むと三陸鉄道への乗り場につながっている。出発は13:10。
当日有効の青春18きっぷがあれば一日乗車券が九百円になる割引もあるのだけれども、元旦はすべて正月パス移動なので正規料金で片道切符を買う。宮古駅から久慈駅まで千八百円。

三陸鉄道国鉄時代の盛線(盛駅吉浜駅)、宮古線(宮古駅田老駅)、久慈線普代駅久慈駅)を元に運営されている三セク鉄道。つまり、これはあれだ、宮脇俊三さん構想の「急行ほたて」(→☆ 2008/09/06の日記)に通じる、岩手県三陸海岸沿いを縦断する鉄道。釜石〜宮古間はJR山田線なので縦貫鉄道ではないけれど、わたしは「急行ほたて」の一部に乗ったということだ。三陸鉄道は、盛〜釜石の「南リアス線」と、宮古〜久慈の「北リアス線」の二線路を持っている。

さて、「2 ノスタルジック山田線」で長々としゃべりすぎたので、ここではすこし静かにしましょう。

一日一往復の列車「さんりくしおさい号」。昭和初期をイメージしたというレトロ調の列車は見た目もかわいく、車内はすずらんの花のようなシャンデリアが下がり、椅子もかわいらしく、むかしの食堂車みたいな雰囲気。

 
 

元旦なので門松も飾られていました。二両編成でしゅっぱーつ!

学生時代に田老から摂待までのひと駅分には乗ったことがある。実地研修にきているくせに、フィールドワークに飽きて散歩をはじめた不良学生のわたしは、用事もないくせにローカル線の駅にきて列車に乗ってみたくなったのだった。そのころはまだそれほどは鉄道に自覚的ではなかったはずなんだけれども。

田老駅は山側にあってやや小高いので港を見下ろすことができる。「眼下に港」という車窓は三陸鉄道の主たるスタイル。そういえば二度目に田老の町を訪れた大学三年時のフィールドワーク合宿では、ちょうど空手の全日本大会か引退試合の直前だったので、早朝にひとりで走りこみをして水揚げ中の港まで走っていったのを思い出した。

田老駅で車内アナウンス。「列車の待ち合わせのためしばし停車します」、もしや、と眺めていたら、やってきたのは、こたつ列車「さんりくしおかぜ号」。これも三陸鉄道冬の名物、車内にこたつが置かれたのんきな列車。お座敷に掘りごたつで走るのだ。わーっと興奮して窓にくっついていたら、あちらから見たこのレトロ列車も珍しいのか、短い停車時間は互いに撮影大会。

 

このあたりはほとんど雪がない。田老駅を出て摂待駅までのあいだは長いトンネル。三陸鉄道はトンネルも多い。トンネルを抜けると駅が近く、高い視界から海と空がパーッと開けるという寸法だ。宮古を出たばかりのころは曇っていたのが、小本駅をすぎたあたりで青空になった。気持ちのよい晴天。

鳥越駅前には港。元旦なので海もお休みか、波もなくとても静か。こんな旅先で感じる、穏やかな正月もいいな。その先、堀内駅に近づいたあたりで、車内アナウンスが入る。「ふりかえると見える海中の岩が堀内夫婦岩です」。空いた車内はのんびりと海岸線を観光する。堀内駅の手前で潮がぶつかる三大漁港と呼ばれる港に出る。生活と海。

堀内駅を過ぎ、トンネルを抜けると、高さ33メートルという三陸鉄道でもっとも高い橋をわたる。列車gが減速する。「カメラをお持ちの方、シャッターチャンスです」、ナイスビューで停車し、しばし乗客は港を見下ろして興奮する。

鉄橋と列車の影も映っています。高い!

そして先にはまたトンネル。


そんな、海とトンネルと晴天の旅。14:41に久慈駅着。愛すべき三陸鉄道北リアス線でした。



【北東北&北海道 冬のより道 2009/01/01-02】
1 正月パスと東北新幹線 2 ノスタルジック山田線 3 三陸鉄道、潮風と晴天 4 うみねこ八戸線、津軽海峡の夜 5 函館/ロワジールホテル函館 6 冬の道央から函館本線山線へ