新版ミスハタリの北陸旅 1 大糸線カップルトゥギャザー

さいきん旅日記をせっせと書いているせいか、どうにも「旅ばかりしていますよね(つまり、仕事してませんよね?)」と言われるミスハタリ、その旅道楽根無し草の称号に恥じることなく、月が変わればまた旅かばんをがばっと抱えて列車に乗り込みます。こんどの行き先は金沢、奥能登へ。新潟まわりの新幹線やフライトを無視して、大糸線経由で進むのです。遠まわり上等、だってそれがメインイベントのひとつなんですもの。

さて、行楽シーズン真っ只中、新宿駅7:18発の臨時特急あずさ73号に乗って出発です。まずは中央本線でひたすら西へ向かいます。高尾を過ぎたあたりから急に様子をかえる田舎風景はさておき、おたのしみはここから。松本駅でいったん下車して、新宿駅後発のあずさ3号に乗り換え。松本から先の大糸線南小谷駅まで特急列車で乗りつけるというめずらしく大胆な移動。もちろん席は左の窓側と決まっています。穂高を過ぎ、信濃大町を越え、白馬へと至る、北アルプスの白く険しく美しい山並み。白馬駅で途中下車したい興奮をぎゅうぎゅうとおさえて、南小谷駅11:41着。

反対側のホームには、いつものあの子が待っていた。跨線橋をパタパタと走って渡る。ひさしぶり、と声をかけたくなる、大糸線の朱色のカワイコちゃん、キハ52-156。ここ南小谷駅から糸魚川駅までの区間は完全非電化で、JR西日本の管轄となるのです。

大糸線の愛くるしさとすばらしさについては、これまでにも何度も何度もしつこく書いてきました。大糸線は、春夏秋冬、どの季節に乗っても姫川沿いの車窓がすてきだし(雪景色の大糸線、次の冬こそ乗りたいなあ)、朝でも昼でも、きっと夕暮れ時でも、どれもきっとかわいい顔をしている。わたしが大糸線のことを話すときの口ぶりは、恋人のかわいらしさを自慢するのによく似ている。

☆ 2008/08/06 「ミスハタリ 水の旅 6 大糸線の恋」
★ 2007/09/02 「ミスハタリの北陸旅 2 白馬と大糸線」

ふだんは一両の列車がコトコト走る大糸線非電化、なんと今日は二両編成。ゴールデンウィークの多客期のため増結なんてしちゃったりなんかしているのだ。お相手は黄色×青のツートンカラー、キハ52-125。

大糸線を走る三種類の車両のうち、ふたつに同時に乗られるなんて! もうっ! 連結部分がレア! 今日は運転士さんもふたり乗車! キャー! と、興奮あらわに写真撮影。なかなか落ち着いて席に座っていられません。南小谷駅11:49発、何度目かの恋。わたしと大糸線との60分間がはじまります。


 
 
 

いつもより多い乗客を乗せた二両のキハ52系は、姫川に沿っていつもとかわらず一所懸命に走る。ときにのんびりと減速して山並みを見せ、ときにトンネルの闇のなかで加速し、山登りではディーゼルエンジンをぶんっと鳴らしてからだいっぱいに振動を伝えて走る。その挙動のひとつひとつがいちいち愛らしく、応援したくなる。大糸線は、窓の外の豊かな風景やノスタルジックな車両の魅力はもちろんのこと、体感できる列車だから好きさ。

このキハ52系、いまだにドアは手動です。

後部車両の窓から見た線路。凛とした単線にうっとり。

 

沿線では寄り添う姫川の流れや、すこし遅い花景色、水が張られたばかりの田植え風景が見られます。あいにくのくもり空ですが、それもまたよしと思えるふところの広さよ。

起伏に富んでいた山の線路がいつしか平地に降りてきたところで、12:44糸魚川駅に到着。ホームから見えるレンガ造りの車庫も健在でひと安心。あ、そこにいるのは黄色×赤の、オシャマなキハ52-115。かわいいなあ。


いつもとすこしちがう、いつもと同じ顔をした大糸線、二両編成のカワイコちゃんとの旅。couple together、こういうのも悪くないものね。

【JR西日本/JRおでかけねっと 糸魚川地域鉄道部】
【大糸線 Oito Line】 愛情あふれる大糸線情報サイト。写真投稿のゲストブックがたのしいな。




【新版ミスハタリの北陸旅 2009/05/04-06】
1 大糸線カップルトゥギャザー 2 金沢〜居心地のよい町とすてきな大人たち 3 能登、くじらをめぐる冒険 4 海と絶壁と二三味珈琲