新版ミスハタリの北陸旅 2 金沢〜居心地のよい町とすてきな大人たち

糸魚川駅到着後、名残惜しく写真ばかり撮っていたら、先のホームに「特急はくたか 8号」が到着。大糸線カップルに別れを告げて、12:54糸魚川駅出発。

一応は進行方向に向かって右側の席をおさえておいたけれど、海沿いとはいっても、海岸と線路のあいだに道路がはさまっているんだもの、いまいちおもしろくない。これはわかっていたことで、むしろわたしにとっておもしろいのは、この区間糸魚川〜富山〜金沢)で初めて乗る「特急列車」のほう。各駅停車に比べればずいぶんとフカフカなシートにもたれてうとうとしながら過ごす。金沢駅14:18着。

まずはバスに乗って、東山のブックカフェ「あうん堂」さんへ。ここに来るのは二度目なのに(→ ☆前回 2007/09/02)、つい「ただいま」と言ってしまう心地よさ。町へ散歩にでかける前にちょっとだけ立ち寄るつもりが、カフェママのK子さんがいれてくれた中川ワニ珈琲がおいしくて、店主のほんださんと本や鉄道のハナシをしながら、すっかり長居。二階(ふだんはおふたりが暮らしている)はきれいなギャラリー仕様になっていて、ちょうど、イラストレーターの沢野ひとしさんの個展「山の時間」がひらかれていた。新刊『山の時間』は、日本各地の山を歩いて描いたもので、父がよく登る北海道の山々も載っており、うれしくなって一冊購入。

山の時間

山の時間

この本の原画をはじめ、水彩画やエッチングリトグラフなど、けっこうな数の展示。うろうろ眺めていたら「ほら、ハタリさんのために残しておきました!」とほんださんに呼ばれる。ぎゃー! ちょうどその前々日から二日間、沢野さんがサイン会のためにお見えだったそうです。あ、おしゃべりに夢中で、写真を撮るのをうっかり忘れました。言うまでもなく、あうん堂はすてきなブックカフェで、ほんださんとK子さんはすてきなご夫婦です。

【あうん堂】 石川県金沢市東山3-11-8 電話:076-251-7335 (※水・木曜定休)


それから金沢の町を散歩。てきとうに路地に入り、てきとうな気分でだだっ広い金沢城跡公園に入ると、やっぱり林のなかで迷子になった。

金沢21世紀美術館のそばを歩き、もっきりやの前を通りすぎたら香林坊。さて、晩ごはんはどうしよう。うーん、おでんかなあと思っていたところで、急遽カフェバー「puddle(パドル)」に立ち寄ることになった。地下にあるお店なのに明るい陽射しを感じさせる店内。白木と穏やかな照明がオシャレでかわいい。繁華街のなかでピクニックをしているような心地よさ。生ビールと前菜の盛り合わせをいただく宵の口。併設されているスペース「social」では、昨年マイスティースがライヴをしたそうです。ここで店主のサエキさんにごあいさつ。お酒とアテのメニューや黒板を眺めながら、アレもコレもおいしそうだなー、ビールをもう一杯分は長居したいなあと思ったところで、「ごはんは?」とサエキさんが言ったので、階段を上がってお店の外に。ここでもおしゃべりに夢中で、写真を撮るのをうっかり忘れました。言うまでもなく、パドルはすてきなカフェバーで、サエキさんはすてきな兄貴です。

【puddle】 石川県金沢市片町2-10-42 RENN bldg.B1F 電話:076-223-0038 (※月曜定休)


サエキさんご推薦、お目当てだった木倉町のお店(5席くらいしかない、大衆割烹? たいへん! 名前忘れちゃった!)が満席だったので、次回のリベンジを宣言し、浅野川沿い主計町にある「空海」へ。

 
【空海】 石川県金沢市主計町3-10 電話:076-261-9112

空海」は、そもそもあうん堂のおふたりのオススメのお店で、サエキさんもオススメしてくれたので、これはまちがいであるはずがない。運良く席が空いたところだったので、さっそく、ほたるいかの黒造り、金時草のおひたし、わたり蟹のパスタなどを食べ、大いに呑む。胃袋と気分があたたまったところでサエキさんご夫妻が合流して、おしゃべりしながら杯を重ねる。ああ、大人っていいなあ。って、満腹で酔いどれて、駆けっこして帰ったんですけど。サエキさん、ありがとうございました。

翌朝はよく晴れていたので浅野川沿いを散歩。川のある町というのはそれだけでまずすてきだ。前に、金沢在住の画家の青山健一さんがブログで「近所の川が空港みたいだと思った」という絵を描いていたけれど、あれは浅野川かな、それとも別の川かな、いずれにせよ金沢もまた水の町なのだなあ。朝の光を弾いてまぶしく光る川面や、青い空を見上げながら歩いていたら、どこまでだって行けそうになったけれど、朝食が待っているので橋を渡って反対側の川辺を歩いて東山に戻る。


朝の光と風が入り込む場所で、おいしいパンの数々と丁寧にいれられたコーヒーと小松菜ジュースが用意されたハッピーな朝食をいただき、旅の二日目があらためてスタート。あうん堂さんにて、やっぱりおしゃべりしすぎてすっかり長居。ほんださん、K子さん、ありがとうございました。

あっ! 「座頭市映画手帖 petit」、これからは金沢あうん堂さんでも手に入りますよ。

ふたたび金沢散歩。夕暮れどきに歩くのと、朝に歩くのでは、同じ路地でも町の表情はずいぶんと変わる。白鳥路ホテルのよこから遊歩道に入り、兼六園そばへ抜けて、金沢21世紀美術館へ。

 

前に訪れたときもそうだったけれど、やっぱりこの椅子とソファの写真はつい撮ってしまう。連休というレジャー気分満載な美術館は企画展のチケットを買うひとたちが行列を成していて、ショップは大入り、外の芝生のうえにもたくさんの家族連れ。甘いクレープとジュースで、こちらも負けじとレジャー気分を味わう。旅とはそもそも、それがひとり旅でも慰安旅行でも、寂しかったり切なかったりする結末ではなく、どんなシーンでものん気なレジャーになりうるものなのだ。

ふたたびもっきりやの前を通りすぎ、喫茶「芝生」の角を曲がって堅町方面へ。にぎやかな商店街を抜けると、新竪町商店街の通りに出る。器やガラスや家具のお店を冷やかせば、一泊二日の金沢散歩はおしまいです。

旅先の町を好きになる理由はかんたんで、風景と人に恋をするかどうか。その両方に恵まれた金沢は、また別の季節が来たら、いろいろな理由をつけてあそびにきたいと思わせる町だったのです。



【新版ミスハタリの北陸旅 2009/05/04-06】
1 大糸線カップルトゥギャザー 2 金沢〜居心地のよい町とすてきな大人たち 3 能登、くじらをめぐる冒険 4 海と絶壁と二三味珈琲