緑と坂のある町 〜 「OSAKA東区スタンプラリー」
週末の雨があがり、よく晴れた月曜日。大阪玉造にあるブックカフェ「beyer(バイエル)」に行きました。心地よいうわさをきいていたし、なにかの本でお店の様子を見たことがあったし、「きっと好きなところだとおもう」という声もあった。駅前からアーケードの商店街を冷やかしながらふらふら歩いて、呑み屋かすし屋の角を曲がった路地に、ガラス張りのお店がありました。
さほど広くはないスペースに、こぎれいに整理された写真集や詩集などが並びます。ちょっと手にとってみたくなる本やポストカードの数々。一階でコーヒーとりんごのケーキをお願いして、ロフトのような造りの二階にあがります。好きな本をめくりながら毛足の短いカーペットの床にころがっていると時間はするすると逃げていくのです。
- 作者: 高山なおみ,齋藤圭吾
- 出版社/メーカー: アノニマスタジオ
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 単行本
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以前雑誌編集者時代に、一度だけ高山なおみさんにコラム原稿をお願いしたことがあって、そのときに高山さんが書いてくださった「女子高生が茹でたうどんにあんこをかけて食べていたのでびっくりしたけど、よく考えたらなるほどなと思った」という話を思い出してひとりでゆかいな気分になりました。まるで料理本を見ようとしないハタリキッチンですが、豚の角煮に黒砂糖をつかったり、夏になると薬味味噌を仕込んだり、野菜の皮をむかないで炒めたりするのは、白状すれば高山さんの影響なのです。さまざまな国でのおやつやごはんの話に、ああ旅ごころが……って、いまも旅のとちゅうなんだけど。夕暮れどきになったので、店主のご夫妻にごあいさつをして、にやけて店をあとにする。そのときに奥さまが「どうぞ、スタンプラリーやってます」と手渡してくれたのが、きれいにデザインされた地図でした。
「OSAKA 東区 スタンプラリー」
大阪市内東側、大阪城の辺りにかけて、少し前まで「東区」という地区がありました。その東区付近を中心に少し広げた地域は、大阪城、難波宮、真田山や四天王寺など、歴史も古く、木々の緑と坂のある町です。そこに点在するお店が12店集まり、5月1日から17日まで(※31日までになりました)、初夏のスタンプラリーを開催します。町散策とお店巡りにいらしてください。
翌日の昼すぎ、日よけ帽子をかぶって地図を片手に散歩をスタート。天気のよい午後は、ひたすら歩くに決まっています。
まずは、funny furnitureという家具屋さんへ。ステンドグラスの下の扉を開くと、センスよくリメイクされた木製のキャビネットやテーブルなどが置かれていた。ソファはさすがに無理だけど、白い革が張られた小さなスツールくらいなら持って帰られるかしら、なんてモゴモゴ考えていたら、お店の方が出てきてくれたので、スタンプを押していただく。「今日はたくさん回りますか?」、三軒くらいかなあ、「火曜日ですし、定休日のお店もありますもんね。よい散歩を」。
【funny furniture】(家具屋) 大阪市天王寺区空清町1-11 上町ビル1F 電話:06-4304-8765
地図を見ながら北に進んで、大阪女学院のそばを歩く。ほんとうにこのあたりは緑が多い。小さな製本屋がせっせと機械を動かしている。低い建物、古くからの家が多いのんびりとした住宅街。ときどきのら猫がふらっと道路に飛び出して、家の前に置かれた植木のあいだに消える。なんてことのない角に、緑色があるのはきもちがいい。
そして定休日とわかっていながらKiKusaの前へ。お店の外に無造作に置かれた草花にうっとり。ひょいっと店内をのぞいてみると、中にいらしたご主人が「あっ、スタンプですね」と出てきてくださった。足元にはチビッコちゃん。おいくつですかー? 「一歳半です」、どうもこんにちは。スタンプを待っているあいだ、チビちゃんはわたしのメリッサのゴムサンダルに手をかけてあそんでいた。大阪・北堀江のシャムア・ギャラリーにて展覧会を開いているそうで、そのご案内を眺めつつ散歩再開。また大阪に来る理由が増えてしまった。
そうやって、知らない町をどんどん歩きます。
15時、おなかが減ってきたのでちょっと遅い昼ごはん。CYPHERで季節のプレートランチ。あっさりと炊かれた玄米ごはん、ベジミートの酢豚や、キッシュなど、気の利いたベジ仕様(でもけっこう腹もちがいい)。「白菜とタイムのスープがありますよ」。このスープがおいしかった! テーブルクロスがかわいい。
公園近くの角っこにあるほんとうに小さなお店。席が少なくて、営業時間も12時〜16時と短い。わたしがお邪魔したときはちょうどひとりきりで、玄米をかみかみのんびりできました。
【CYPHER】(Organic Foods, Drinks / Photo) 大阪市中央区森之宮中央1-9-20 電話:06-6809-4631(12時〜16時と営業時間が短いので注意)
森之宮駅のすぐそばまで来てしまったけれど、今度は南に向かってふたたび住宅街のあいだを引き返します。左手にはときどきちらりと見えるJR環状線の高架。オレンジ色の103系や201系が走っていくのが見えます。かわいいなあ。中央線ユーザーとしてはうれしいノスタルジー。
ずんずん歩いて一駅とばして鶴橋まで。鶴橋といえばホルモン焼きとキムチとゆかいなすし屋というイメージの町だったのだけれども、駅近くのこんなに細い路地のなかにカフェがあるとは知らなかった。というわけで、女性おひとりでやっている小さなカフェ「あまね」にて冷たいカフェオレで休憩。かわいらしい雑貨が多くて目移りして気もそぞろ。レジ前にかけてあったピアスがかわいかった。名前を聞いたことのあるバンドや劇団、お店の案内のポストカードやチラシを眺める。そういえばこのエリアには、わたしにとって数少ない大阪のお友だちが住んでいるはずだ。
夕暮れが近づいてすこし涼しくなってきた。夏日の大阪「東区」探検はまだつづきます。今度は鶴橋駅から上本町駅へ西日に向かって坂をあがります。
また小さな公園。そのそばでいい匂いをさせていたのが、Cocoroという名前のパン屋さん。緑色の壁がキュート。ずきん姿でパンをくわえた犬のマークがかわいいです。クリームパンとメロンパンとバターロールを買いました。レーズンものの種類も多かった。甘いおやつパンがハタリの好物です。ポンッとワンコのスタンプを押していただきました。
と、見知らぬ町をぐるりと回ったところで日が落ちた。本日の散歩と冒険はここまで。この地図に載っている、まだまだ行ってみたいお店はたくさんあるけれども、それはまたこの町を訪れるための口実としましょう。今日の課題、珈琲豆のおつかいを無事に済ませたら、あとは晩ごはんの行方にこころを委ねるだけなのです。
ちょうどバラをはじめとした花がひらく季節だったってのもうれしい。なにげなく家の前に置かれた鉢植えも色あざやかで、道沿いの木々の新緑もまぶしくてうきうきした、晴天の下での町歩き。地図を片手に訪れたお店はみんな居心地のよいところだった。そして、すてきなお店のご主人は、みんなすてきな男性なんです、ああうっとり! という発見とともにあった散歩でした。今月末の31日までスタンプラリーは開催されているらしいので、オリエンテーリング気分であそびにいくのもたのしいとおもいます。
※それぞれ定休日やとつぜんのお休み、営業時間にご注意を。12店のくわしい案内は、参加されているお店のひとつ、喫茶星霜さんのはてなブログ(id:kissa-seiso)にあります(→ ☆)。