今夜の座頭市三隅研次監督の『座頭市血煙り街道』。勝新近衛十四郎の殺陣に息をのむ。まばたきしている間にゆうに数挙動見逃してしまうほどのスピード。四分以上つづくラストの対決シーンには、微分していけば相当数の挙動が含まれることだろう。間合いをはかり互いににじり寄るときの緊張感、それは空手でも同じ。へたくその怪力者が力任せに手足をふりまわすのなんて技ではない。相手との張り詰めた間合いを打ち破る一瞬をたしかに見極めて、素早く正しく強力な技で襲いかかる、そういうやり取りは傍から見ていると美しい。美しい、というのは「舞踊のよう」というのとは違う。そういう殺陣は何度でもビデオを巻き戻してみたい。今ではいろんな映像効果を駆使した「アクションシーン」が大流行しているが、そんな時代劇もどきしか知らないわれわれ若い世代がこの対決シーンを観たらきっと腰を抜かすはず。真剣と身体のみで命のやりとりをするちゃんばらの素晴らしさ、わたしは支持したい。古臭いとか言われたって構うもんか。