Y氏の月曜映画誌講義

htr2006-04-24

月曜日、目白、学習院大学。階段教室の前方真ん中の席を陣取って午後六時の鐘が鳴るのを待つ。Y氏の月曜映画誌講座がはじまる。スクリーンに映るは、ジョン・ヒューストン

文化と伝統を排した新興学園都市に紛れ込み、やさぐれ気味に暮らしていた十代の頃。足らない娯楽を求めて入った市立図書館の書棚で、山田宏一さんの名著『友よ 映画よ』に出会ったその瞬間、世界がパーッと拓けて、その日からわたしは映画ファンになった。数年前に池袋で一日だけのワークショップが開かれ、それは『トリュフォー、ある映画的人生』の増補文庫版が平凡社ライブラリーから出版された記念イベントだったのだけれど、そこで初めて山田宏一さんにお会いした。あの日のことはいまでもはっきりと覚えている。教室でトリュフォー映画を事前に編集したビデオをいくつも上映し、生前のトリュフォーととても親しかった山田さんの、貴重な映画体験に触れることができた。それはほんとうにドキドキするよな体験だった。講義後、何度も読み込んだ『友よ 映画よ』を手に、赤面で吃りながら自己紹介をして直筆サインをいただいた。お話したのはそれがはじめてだった。

三年前から、青山の月曜映画誌講義に潜りこむようになった。山田さんの穏やかな語り口、稀少な映像作品の数々。こんなにも映画に造詣が深く、映画体験の豊かな「先生」が、その場にいる誰よりも目の前で流れている映画に興奮している。何度も観ているだろうに、そんなことは関係ないのだ。山田さんの「講義」は教壇ではないところから声が聞こえる。映画を教えるのではなく、楽しむ、それはなんて肩の力が抜けた愛の形だろう! わたしはいっぺんに月曜日が大好きになった。

昨年から、山田さんは学習院大学でも「公開連続講演会」という一般講座を開講された。「今年も学習院大学で講義をやりますよ」と、山田さんから直々にご丁寧なご案内のお手紙をいただいたので、今年はこちらに通うことにした

第二回目の今日は、ジョン・ヒューストンのAFI功労賞の受賞式の映像を観ながら、彼の映画史を駆け足でたどっていく。以前にも何度か受賞式の模様をみたことがある。この日の司会にはローレン・バコールが登場。拍手をして彼を讃えている人々はみないつもなら喝采を浴びているスターや映画関係者たちだ。そこに集まった全員で大きなショウを作り上げているような華やかさ。それはとても幸福な、映画そのものを讃えるショウ。

知る、得る、という行為はなんてすてきなことだろう。ことのほか映画の幸福に触れると、わたしはドキドキする。月曜日はその興奮を改めて思い知らされる日。知らない事がたくさんあるということは、なんてたのしいことなんだろう!

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学習院大学大学院 人文科学研究科 身体表象文化学プロジェクト
山田宏一「身体表象文化としての映画誌」
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~corp-off/