副業「並び屋」やっております。開業二ヶ月目にしてようやく「小ざさの羊羹行列に並べ」という仕事依頼がやってきた。夜明けとともに寝癖あたまで初出勤! 吉祥寺ダイヤ街、一畳の和菓子屋「小ざさ」は、日中なら最中を買う客で賑わうけれど、実の目玉は毎朝百五十本限定の羊羹なのだった。昔ながらの製法であずきを優しく練っています。さて午前五時二十分、自転車を駅前通りに停めて小さざの前にいくと既に行列が。わあ、早く着いたつもりなのにもう無理なのかーと思ったら常連らしき小父さん小母さんたちがわらわらと寄ってきて、「おねえさんで三十人よ」「いやあ、ラッキーだね」「今日は終わるの早かったねえ」と口々に言い、行列の最後尾に案内してくれた。そう、羊羹はひとり五本限りで並んだ全員が五本買っていくので、三十人集まったところで打ち止めなのだ。地面に座布団を敷いて座ろうとすると、そこには玉ねぎとサツマイモと梨がゴロンと転がっていた。「?」と眺めていると、前に並んだ小父さんが「ああ、それは八百屋さんからのプレゼント」と言った。羊羹を買いにきて野菜をもらってしまったよ。