渋さ知らズ四月馬鹿ライヴ。「行けばわたしも馬鹿になれますかね?」「それはどうでしょう、でもアタシが馬鹿なのは保証します」。そんなわけで、JJギャルコスプレで仕事をこなした帰り道に新宿ピットイン。ダンドリスト不破さん率いる大人数演奏のオーケストラを観たのは昨年末のNHKラジオ公開録音ライヴ以来のことだった。とはいえ、エンターテインメント要素は実は意外に薄く(でもブラザーイゴーがわめいていたし、爆竹も鳴っていた。イゴーさんのたこ焼、また食べにいこう)、ナーダムで幕を開けた今夜のライヴはサン・ラの「Space Is The Place」などを挟みつつ、「犬姫」や「At Last I am Free」「自衛隊に入ろう」など、ああ聴きたいなあと望んでいた曲が、さまざまな楽器のソロを組み合わせながらめくるめく世界を作り出していったので、三時間半の長丁場、つねにわたしのからだは床から数センチ跳びつづけていたのだった。渋さ知らズオーケストラはまったくもって見世物だ。だから馬鹿がよく似合う。全身全霊をこめた馬鹿騒ぎ。馬鹿の皮をはいでも中身はやっぱり馬鹿だった、というのが本気の馬鹿だ。今夜はとくに辰巳さんのトランペットに痺れた。パリッパリッとした音色がふしぎな違和感を生んでいて音が目覚めていく感じがしたのだ。久々に渋谷毅さんがキーボードを弾いていた。加藤さんのギターはやっぱり柔軟かつ男前で、もっと聴っかっせってえーってソロのたびに思う、そして笑う。舞台をところ狭しと動き回るイゴーさんの姿を、チューバの関島さんが無表情のまま目で追っているのがなんとも面白かった。本日のステージ、左にトロンボーンの中根さん右にヴァイオリンの勝井さんと、細面男前メガネが飛車角の如く配置。音の厚さと賑やかさと大人が馬鹿やっているヤンチャな空気が気持ちいい。ワイワイ踊ってごきげん。そしてくわえ煙草で立ったり座ったりする不破さんはやっぱりかっこいいなーと今夜も飽きずに思うファン心。さて午後十一時半、地上に戻ると唐突な雨がふっていた。わたしは馬鹿なので傘を待たずに歩いて帰る。家に着くころには全身ずぶ濡れになっていたけれど、でも馬鹿だからそれもまたきもちいいなんて思うのだった。