音楽とお酒と座頭市にまつわる近況 

htr2006-05-24

ミスハタリの五月の近況。音楽とお酒にまつわるいくつかのお話です。

五月十一日、渋谷のNHK東京中低域アルタードステイツの「ライヴビート」公開録音。東京中低域、床に三角座りをして聴く。バリトンサックス男衆ばかり十管並んだフォトジェニックなこのバンド、同じ種類の楽器でありながら文字どおり十人十色になり響く音色、不揃いなメンバー、音圧、水谷さんの色気のある歌声も姿もほんとうに大好きなのだけれど、この日の演奏はくすりとも笑えなかった。いつも面白いと思っていた東京中低域、こんな日もあるのかと意外な発見。アルタードステイツはオトコマエのスリーピース。内橋さんの動きが速すぎて耳目がシャックリをしそうになった。収録時間六十三分一本勝負の演奏。三角座りの膝をぎゅっとかためて音と交わる。ギター、ベース、ドラミング、そして数々のエフェクト。音がどこまで拡がっていけるのか、彼らの暴威は実に知的だ。大興奮。

五月十八日、高円寺の楽やで辰巳光英さんのソロプロジェクト「Spaced Out!!」。今回は鬼頭哲さんがゲストのデュオ演奏。このふたり、終演後のライヴハウスや居酒屋でのんだくれセッションをしている姿をよく見かけるけれど、はたから見ても、仲良しのひみつはそのちょうどよい距離感なのだろうなあとよくわかる。渋さ知らズでもふたりのデュオが出来あがることがあって、そのシーンを観るたびに期待が高まっていた。演奏前に近所の焼鳥屋ですでにチャージ済みのふたり、辰巳さんはエレクトロなトランペット。鬼頭さんはゲームボーイ。第一部はミニマルな展開。言ってみればもっとも安易なスペイシー。まだまだ開拓の余地あり、だからきっと面白くなる。その後、鬼頭さんはフルート、クラリネットと楽器を持ち替えて、最終局面でバリトンサックスの登場。途中で宇宙ではなくアメリカに行きかけたりしたけれど、意外というか予想通りというか、実に緊張感のあるライヴだった。カウンタに掛けてうるめ干しを食べたり久々にたんたかたんを呑んだり、隣に座っていた、京都からやってきたというトロンボーン吹きの方からウチの娘の特技は乗馬なんだよねーえーすごいっすねーなどとおしゃべりをしたりしながら、今宵の宇宙遊泳の余韻を反芻する。商店街の花屋で買った茄子の鉢植えを持って帰宅。今夏はハタリベランダ農園が復旧の予感。

そして五月下旬のミスハタリはどんな塩梅かというと、今いちばんほしいものは「大阪万博のDVD」で、今もっとも心を奪われているのは「名古屋のアローズで見つけた緑色のホットパンツ」のこと、目下の悩みごとは「雨がつづくさえない天気なので洗濯がイレギュラーになってしまってイヤだわあ」ということ。「MOTHER3」をプレイしては、不憫なサルを見てグシグシと泣いたりしています。

そしてお知らせです。先ほどめでたく完売した「座頭市映画手帖」の増補版とも新版ともいえる「勝新座頭市完全読本 all about ZATOHICHI(仮)」の出版が決まりました(今夏出版予定)。制作の状況はこちらでときどきリポートしていきます。今年の夏は三年前と同じように、ミスハタリは関八州から出ずに座頭市と添い遂げることになりそうです。サンキュー、市っつあん! 見えないその目で見た風景を追う旅がまたはじまります。座頭市へのさらなる愛情と、ハタリブックスへの応援をどうぞよろしくおねがいします。